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視覚イメージの音楽への取込みについて

  • 1) 映画・アニメにおける映像と音

    映画やアニメなど、映像作品で使われる音声は、大まかに三つの要素から成り立っていると思う。一つは人の声や言葉といった、俳優(声優)のセリフやナレーション、情景にかぶさるモノローグなど。第二に、状況や動作に付随する環境音や、雰囲気や劇的効果のために挿入された効果音などが。三つめが音楽で、挿入歌や、劇中に使われるBGMといったーー。

    音声と映像との関係は、「映像に付けられている音」という観点から考察されることが多いけれど、映画などの映像作品から「映像」だけをなくしてみれば、残された音は「サウンド・トラック」になるといえると思う。音だけになったトラックを聴いて記憶を呼び起こし、失われた映像へと結びつくということはあるだろう。それはリアルタイムで音と共に視ている映像ではないけれど、もし、もともと映像が存在せず音声しかなかった場合、その音声によって映像表現の「映像」の部分までを実現させることは可能だろうか。さらに、それを映像作品ではなく音楽として成り立たせる方法はあるだろうか、というのがここでの趣旨で、まず初めに、音源の記号化ということから考えてみたい。

    2) 音像の記号化とデザイン化

    たとえば、どこかから鳥の鳴き声が聴こえてきて、その音を聴いただけで「鳥」だとわかるということは、「鳥」という存在にその「鳴き声」がつながっているからだといえる。聴いた人からすれば、「鳴き声」から「鳥」をイメージしたわけで、このことは、具体的な音(=鳴き声)を記号化していることになると思う。

    鳥/鳴き声 → デザイン化された鳥のイメージ


    音の記号化は、ある具体的な音源があらわしている対象物を抽象化することにもなるから、音響は、映像表現における『意味作用と形象』を伴ったオブジェクトのようなものだと捉えることも可能だろう。つまり、具体的な音を記号化することは、視覚的にデザインされたイメージを伴った音響へとつながるということになる。

     1. 鳥(実物のイメージ)から、デザイン化された鳥(記号的なイメージ)へ。
     2. 音像の形象と言葉の関係(象徴的効果)。
     3. 映像的なモンタージュを参照しながら音像を合成する。
     4. 音像の配置や組み合わせによってセマンティック(意味的)な関係を生みだす。

    3) 音として構成されたシチュエーション

    たとえば、波の音にモーター音を加えて鳴らせば、水上を走るモーターボートをあらわすことができるかもしれない。鳥の声が鳴ったあとに雨の音を付け足せば、天候の変化や時間の推移をあらわせるだろう。このように、記号化された音源は、ストーリーや意味を伴った音響となる。それらをうまく楽曲につけ加えて、効果音として活用できるかもしれない。さらに音楽と一体化させるためには、これらの音源を楽曲のリズムのなかに組み込んでしまえばいいと思う。そうすることで、リズム化された音源は、楽器演奏と同等の位置と役割を担うことになるはずだ。

    モーターボート

    音源は、ただリズム化されるだけでなく、ミックスやエフェクトがかけられることで加工され、視覚的なイメージと、音楽的な要素が合わさった音響として成り立つようにする。それは多義的で、意外性に富んだものであっていい。創意工夫が試されるところだ。

    また、持続するノイズやアンビエンスといったものは、空間や時間をあらわすテクスチャーとして使われることが多いけれど、それらもやはり合成された音響として、記号化・デザイン化することができるはずで、複数のテクスチャーを配置することによって、環境や場面などが音として構成されたシチュエーションが出来上がる。これらのシチュエーションは、曲形式や展開といった楽曲構造とつながることで音楽化される。

    4) 『意味作用と形象』に結びつく音イメージ

    先に挙げた「鳥の声」などは、聴いただけですぐそのイメージをつかみやすい音だと思うけど、音だけであらわすことが困難な実像やイメージというのもたくさんあって、大抵は、歌詞など言葉を使ってそれらを示すことになる。でも、なるべく言葉を使わずに音響だけで対象物を示したい場合には、「イメージを音として抽象化」する作業が必要になってくるのだろうと思う。

    最近のアニメや映像作品のなかには、質の異なった様々な要素を組み合わせて意表を突いた関係を見せることで、既存の意味作用を異化する効果を狙った斬新な表現が見受けられることが多い。こういった視覚的な効果を参考にして、同様なことを「記号化した音源」によって行うことで、単一の音源だけではムリだった新たな意味と形象を生みだしたいとも思う。楽器音や、具体音、ノイズ、人声などさまざまな音源も用いて組み合わされた形象が、「鳥の声」といった直接的なイメージを超えて、抽象化された「さらなる意味」をつくりだすような音イメージ。複数の意味作用の関連をデザイン化して、それを視覚イメージのように音として構成する手段というか。

     1. 音源はすでに記号化されている。
     2. 記号の記号としてのまとまりが作画的なものとして動くような効果をつくりだす。
     3. そこでは、イメージ、言葉、概念などが音楽的な要素の一つとしてあらわれてもいる。
     4. さらなる抽象化により形象は見慣れないものになる。音像は特定の意味から離れて名づけられないものへと変化する。

    5) 新しい概念と感性を宿した創作へ

    ここまで、視覚イメージを音楽に取り込むにはどうすればよいかということを考えてみたんだけど、こうしてつくられた音響は、『意味作用と形象』を伴ったオブジェクトとして新しい価値を示すための要素になるはずで、それは既存の音楽的要素とも関係し合いながら、新しい概念と感性を宿した在り方としても試される。このことは、作曲するという行為のなかに、これまでなかった作業が追加されることも含んでいる。

    意味作用と形象/既存の音楽的要素

     1. 既存の音楽的要素(旋律・和声・リズム)は下位概念となる。
     2. 演奏(シーケンス)と音源(サンプリング)は共に曲を構成するオブジェクト。
     3. 個々のオブジェクトは制御文(作曲の作曲)により扱われる。
     4. スクリプトによる曲の進行と書き換え。

    以上、実際の制作手法というより、たとえばこんなやり方もあるのではないかといった文章になりました。

    (2022年01月04日)

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音楽の創作に関する


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